曼荼羅寺院 光三宝荒神社

天日神

■光三宝荒神社の由来

 約千六百年の昔、当地は紀北文化の発祥地として栄え、後漢の霊帝曽孫阿知使主と其子都如使主を連れ帰化せられ、阿知使主は大和で領地を拝領し、都如使主は当地に住み、代々文忌寸として朝廷につかえ、天野明神の最高の役人に命ぜられ、実権を握り、其の子孫は寺院建立の実権をも握っていた。空海上人が高野山御開創なさるまでは、七堂伽藍が甍を並べ神野野寺として栄えて居りました。都如使主の子孫に豊内丸、田村麿の両人有り此豊田丸こそ高野山御開創の大恩人であり、高野山では高野明神、地方では狩場明神と祀られて居ります。空海上人の高野山御開創に大変協力せられ、当地にあった寺院、仏像と共に高野山へ提供せられ、当地は淋れ、僅かに観音寺一宇だけ残り現在に至って居ります。
 寛治4年白河法皇が熊野参拝の途次当地に行幸なされ、当地の伽藍が荒廃甚だしきを御覧遊ばされ、観音寺に詣で当地の興隆を一心御祈念なされました。折しも当地巽の方に当って急に明るくなり、燐然と輝きその方角に、歩を進められると、目にも眩き三面六臂の鬼神が立って居られる姿を御観見なさいました。法皇は「一体お前は何者か」と尋ねられますと「我は是れ三宝を衛護する荒神なり、叡慮に応え奉りて当地を守護せん」と。法皇早速奈良の仏師に御神体を刻ませ、祠を設けて祭祀せしめられました。
 之が三宝荒神であり、光明燐然と輝いて居られますところから光三宝大荒神と申し上げ、又天より舞い降りられた所から、天日神と崇め奉るのだと申します。御姿を拝見しますと三面六臂であります。三面は大日、不動、文珠の三尊かと愚考致すのであります。お経の中に「昔日の三人は大日如来、文珠師利、不動明王、亦貧瞋癡、今日は三鬼亦復是の如し。意荒立つ時は三宝荒神、意若しくは寂なる時は本有の如来なり。」と申されて居ります。正面のお顔は大変柔和にして大日如来のお姿であります。首にはこれを表す宝冠を頂いて居られます。根本無明の体を内に秘めて本来具足して居る大日の相を表面に現わして、一切衆生を救済せられるのでありまして其の慈悲の広大さが窺われます。次に六臂即ち手でありますが、第一の手は左右合わせて合掌せられて居ります。是れ即ち如来のお姿であります。荒神に頼り縋って来る信者を拝まれて居るのであります。まことに是れ仏様同志の世界にて私達にお互いに拝み合うお浄土の相を諭し示されて居るものと存じます。次に第二の手は右には蓮花を持ち左は宝珠を持って居られます。蓮花は即ち仏心にして大慈悲を示して居られます。助けを求めて縋って来る者は大慈悲を以って救ってやろうとの思召であります。次に宝珠でありますが宝珠は宝で福分の豊かさを表して居ります。自分に縋って来る者には福分を与えすべてを豊かにし安楽ならしめようとの有難い思召かと排察せられます。次に第三の手でありますが、之は両手とも掌を開き外に向って少し垂れて居られます。即ち与願の印であります。正しく縋って来るならば願いに応じて施してやろうとの有難い思召しでありましょう。此の印は片方丈でも与願になるのですが、光荒神様は両方を開いておられ、其慈悲心の深さ偉大さが窺われるのであります。以上の如く光荒神様は其御姿は鬼神なるも、其内証は大日如来でありまして衆生済度の為に斬様なお姿を顕現なさって居るのであります。
 荒神様!と云うと竈の神様、火の守護神と一般に思われて居ります。それでは何故竈の神様なのか、何故火の守護神なのか、荒神供の作法の中に「若し我を帰依せんと欲せば、身心清浄にして大海大河の側、高山清潔の処に祭祠して上方世界に放ち送らるべし云々。」とあり、祭る身も、祭る処も清浄でなければなりません。竈は火の焚く処であります。火と云うものは一切を浄化する性能を持って居り、どんな不浄なものでも火にかけますと清浄になります。だから荒神様は火を好まれ火を焚く竈を棲家とせられて居るのであります。現在は竈からガス、コンロ電気と使用用途は変わりましたが、火の有る処すべてに荒神様は出現なさいます。コンロの火の消えた時の荒神様の安住の場所を造って差し上げ、火のあつかう付近にお祀りをして御守護を願うのであります。

■光三宝大荒神のお祀りの文

 恭しく申さむ、此の所に在す、三宝荒神は、慈しみの心を以て普く衆生を救ひ給へるが故に、光三宝大荒神と唱へ奉る。光三宝大荒神は、無尽無量の光を以て、一切の病影と悪影を払ひ給ひて、光明健全の世間を送らせ給ふなり。心は形にして形は心となり。心相は業相となり縁起し行くものなり。生命は煩悩の闇にゆらめきて定かならず。願はくば真実の光を照し給ひて、一切を懺悔し、金剛堅固の成道を与へ給はんことを。若し病ありて悩めるものあらば、慈悲の光明を放ちて、心の病影を速やかに除かせ給ひ、身心共に健やかならしめ給へ。南無光三宝大荒神と唱え奉り、一心不乱に祈念するものあらば、大智の火をかざして、其の願ひに順ひて、悉く成就せしめ給へ。天れ一燈を献じて信仰を興し、信仰を以て一燈を献じ、慈悲の光を似て普く衆生に及ぼし、無垢清浄の心を似て、衆生も吾等も皆共に、光明救世の道を、成ぜしめ給はむことを。
    南無光三宝大荒神無量無辺福徳円満成全願
    御真言  おんけんばやけんばやまにそわか
 此のお祈りの文は白河法皇熊野行幸参詣の砌神野々村に於いて、光三宝大荒神を感見し給ひ書き認め給ひしものと伝えられる。

  日も暮れて   心も暗き道すがら
  あかりぞ見へし   光荒神
                         西行法師

■年中行事

一月 一、二、三日 修正会・初詣
一月 十三日 初荒神大護摩・甘酒接待 午後1時〜
二月 三日 節分・星祭
六月 五日 菖蒲祭・チマキ加持
九月 三日 万灯供養 午後6時〜
十二月 十三日 納荒神
毎月 十三日 月例御縁日 午後2時〜
   

 


(御神体) 天日神(光三宝大荒神)
(開創) 寛治四年(1090年)、白河法皇草創。
(所在地) 和歌山県橋本市神野々840-1
(電話) 0736-32-7484